昭和の思い出50 火鉢のコミュニケーション

秋も深まって冷えてくると、母方の祖父母の家では
火鉢が部屋の片隅に置かれました。

こたつはあったのですが、雪が降るレベルの寒さに
ならないと出なかった記憶。

火鉢は陶器製で丸っこく、色は濃い茶色に灰色の
縞模様が入っていて、なんだか木星のオブジェっぽい。

ちなみに火鉢の中は灰が7~8割くらい
詰まってて、その上で炭を燃やします。

炭が燃えてる中央部分を、ぐるりと金具が
取り巻いていて、餅を焼く時などはそこに
網を乗せるわけです。

考えたら手しか暖められないって暖房器具って
結構不便なような……。

しかも正座するのが前提だし、後は
テレビを見るくらいしかできません。

子供、それも幼児と言っていい年齢の頃は
祖母と一緒に火鉢に手をかざしながら

「ずいずいずっころばし」や「おせんべ焼けたかな」
などの手遊びをやっていました。

ものすごくほのぼのした光景ですが、
延々つきあわされる祖母も大変だったでしょうね。

真っ黒だった炭が赤ともオレンジともつかぬ色に
変わって、白い灰になっていくのを眺めるのが好きでした。

そうすると祖母が燃え尽きていく炭を火箸で砕いて、
新しい炭を入れます。

炭を砕く音は、霜柱を踏む音によく似ていました。

炭火で焼いたお餅、おいしかったなぁ……(遠い目)